今年の年始に我が家の猫が大手術をしました。乳腺腫瘍、乳がんです。腫瘍が見つかってから手術、そしてその後の治療について綴ろうと思います。
こちらは最近の家猫の様子。
しこり発見
異変に気づいたのは去年の12月。ゴロンと転がった家猫を足で軽くフミフミしていると、足裏に違和感が。左脚の付け根あたりのお乳がぷっくり膨らんでいました。猫は右4つのお乳と左4つのお乳、合計8つのお乳があります。その1つが妊娠したかのようにぷっくりと膨らんでました。これは変だ。メス猫1匹のみの飼育環境で妊娠できないし、そもそも避妊手術済だから妊娠できないのに。膨らんでいるのは1つのみ。つまりしこりです。すぐにググると乳腺腫瘍という言葉がヒットしました。慌ててかかりつけの動物病院に連れていき患部を見せると先生の顔が曇りました。
検査~治療方針検討
ここからは猫の乳がんについてアニコム損害保険の治療フローチャートに沿って書いていきます。
まず「針吸引検査」を行いました。しこりが腫瘍なのか何なのかを確かめるため、注射器でしこりの中の組織(ほとんど膿でした)を吸い出してシャーレで一晩培養、何箇所かに抗生剤を付けます。培養後の組織を顕微鏡で確認しつつ、どの抗生剤が効くのかを調べます。翌日、培養結果の確認とより詳細な検査のため動物病院に向かい、血液検査・レントゲン・心電図・超音波。
検査の結果、乳腺炎かもしれませんがリンパ球の数値が少し異常値となっているため乳腺腫瘍の可能性が高いです。腫瘍が悪性か良性かどうかは現時点ではわかりません。手術で切り取って病理検査することでわかります。ですが猫の乳腺腫瘍は8〜9割が悪性で進行が早く、見つかった時は転移している可能性が高いです。しこりは3センチ程度確認できました。家猫ちゃんは肥満(7.2kg)なので麻酔がかかりにくいですが……手術等どうします?
ーーーと、まとめると短くなりましたが、先生はとてもとても懇切丁寧にわかりやすく説明してくださいました。ちなみに家猫は恐怖で固まっており、とても検査しやすかったと先生達は仰ってました(ビビリ)
幸いどの抗生剤も効くらしく、膿が減ってしこりが小さくなることを期待して1週間分の抗生剤をもらい1週間後に再チェックすることに。
1週間後の検査結果によりますが、今後の治療方針は3つ。
- 1つ目はしこりのある左側の乳腺を手術で切除する(片側全摘出)猫の乳腺のしこりは約8割が悪性なのと上下の乳腺は繋がってるため、転移を防ぐためにもしこりのある左下部だけでなく上も切除するのが普通らしい。切除した後、横腹の皮膚を引っ張って抜う。
- 2つ目はしこりのある左下部のみを切除する。1つ目に比べて傷は半分で済むけど転移済だった場合は追加で上を切除することになる。1つ目2つ目どちらも術後に取り出したしこりを病理検査に出して悪性か良性か調べて確定診断する。手術で最短3日間入院、抜糸まで2週間かかる。
- 3つ目はしこりが見当たらず膿が溜まっていた=乳腺炎と思われる場合。抗生剤の投与を続けるか、悪化して患部が壊死した場合はこちらも摘出手術になる。
猫の乳がん、人間でいうところの鎖骨から脚の付け根まで切るそうで、術後の傷跡はだいぶ痛々しい……お腹をかっ開くまで深くは切らないから手術は難しくはないらしいけど、ただ肥満は問題で、麻酔薬は脂肪に溜まりやすく麻酔にかかりにくく醒めにくい。手術後は生命反応を弱める麻酔から醒めるまで酸素濃度の高い部屋に移動させるなどの対策をする、と先生はおっしゃいました。
1週間後、抗生剤の効果で膿が減り素人目には見つけられない程しこりは小さくなりましたが、先生には見えているようで……。
家猫はとても元気です。しこりがある以外は。元気だからこそ手術は耐えれるだろうと私は考えました。片側全摘出の手術は年始で決まりました。
手術~退院
年が変わり、手術前日。夜21時までにご飯を済ませて朝までニャンと言われようがご飯は禁止(水はOK)翌朝10時にソファ下に逃げ込んだ家猫を病院に連行して昼から手術。夕方に状態確認の電話を入れました。電話越しの先生曰く、手術は無事終わって麻酔も取れてゴロゴロしてるそうで。翌日再度電話を入れて問題なくご飯食べて薬飲んでるようなら翌日夜に退院予定、少し様子を見る必要があるなら3日後に退院、という流れになりました。
翌日、病院に行って家猫面会。微熱なのとビビリ気性で岩になってしまいご飯を自分で食べない、強制給餌では食べる、面会時はペロペロ食べようとした、ということもあって、も少し入院して3日後の朝に退院することに。頭をこねくり撫でると小さめに喉鳴らしてたし大丈夫かなと思いました。
3日後。朝に病院から電話。家猫の退院は夕方に変更になったと。理由は昨日病衣に届く予定のエリザベスウエア(サイズ大)が今日届く予定になったため。今おデブ家猫は普通サイズのエリザベスウエアを着せてはいるものの背中のチャックが閉まらない状態……届いたサイズ大のを着せて退院することになったとのこと。
3日後の退院日、無事に家猫退院しました。病院では怖くて岩の塊になって全く動かなかったのに、玄関でキャリーバッグ開けたらすぐ逃げて、ソファの下に籠城する家猫…大変やったね……お疲れ様でした……と伝えた後、ドタンバタン暴れてる音が聞こえて様子見に行ったら、エリザベスウエア片腕脱いでた……嫌ですか……でもお腹めちゃ切ってるから着てほしいんよ……どうしても脱ぐならエリザベスカラーに換えてもいいらしいと先生から聞いてるけれども……
退院直後
退院日。お腹を開いてないとはいえ大手術ではあったのと、感覚的にエリザベスウエアが拘束具に思えたようで、ほとんど食べずに動かない家猫……なでながら添い寝すると落ち着いて眠れるらしいと言う夫に任せて、その夜は初めて夫と一緒に寝る家猫。このまま死んでしまうのではないかと心底心配しました……。
退院翌日。少し回復した?エリザベスウェアに慣れない様子。たまに前脚の袖が脱げて「遠山の金さん」状態になってしまうので袖を短くしてみると、動きやすくなったっぽい。ただしご飯はまだ小食……しんどいから食べないのではなく、日頃どう食べてたのか思い出せない感じ?入院中はエナジーケアパウチとa/dウエットをペロペロ舐めつつ自分からは食べずに強制給餌してもらってたらしいので、もしやご飯の嗜好がドライからウエットに変わったのかも?と思ったりしてました。
退院2日目。朝起きたらソファにエリザベスウェアが脱ぎ捨てられていて何事もなかったかのように家猫が押し入れから出てきて「おはよう」と挨拶してきました……脱ぐな。家猫を看ていた夫から「うんこ出た💩」とLINE報告あり。入院してから出せてなかったので心配がひとつ減りました。そのあと沢山食べたご飯をゲッゲ(嘔吐)……うーんまだ本調子じゃないのかと思ってたら、ゲッゲの原因は食べ過ぎじゃなくて、入院中ストレスやなんかで出せなかったうんこ💩を一気に出したっぽかったです。もっすごいでっかいうんこが二箇所に転がっていた……さっきちょろっと出したうんこは最後のブツだったのか……出せてよかったね……(現場の布団シートとお風呂マットを洗濯しながら)
この頃からだいぶ調子が戻り始め「世界の猫を喜ばす」ちゅ〜るに助けてもらいながら少しづつ普段のご飯を食べてもらえるようになりました。エリザベスウェアは、袖無しの服に切り替え。脚の付け根が動かしやすくなってジャンプしやすくなったようでした。
病理検査の結果
切り取った左の乳腺の「病理検査」の結果がコチラです。
先生にとてもとても懇切丁寧にわかりやすく説明いただき、コチラの結果を要約してもらうと「軽度の乳がん」「切除した片側4つの内、腫れていた1番下のみががん」「浸潤性無し(=転移の傾向無し)で完全切除できた」でした。
やはり乳がんだった……けれども軽いがんであり転移の傾向は確認できなかった。すぐに手術を行って本当に良かった、と少しホッとしました。
手術跡は手術から2週間が経って問題なく塞がってくれたので、この日に抜糸(医療ホチキス外し)。3日後にはエリザベスウェアを脱いでOKとのこと。家猫の体重はこの2週間で体重が0.5㎏も減ってしまいました。家猫はめちゃめちゃ元気になりましたが、食事量が普段より少ないままでした。食欲はある筈なのに。先生曰くエリザベスウェアで圧迫されているから普段の量を食べにくいのかもと。この時は「元々肥満気味だから減ってよかった」と軽く考えてましたが、後々軽いトラブルが起こります。
抗がん剤治療開始
これからの治療方針を先生から説明を受けました。猫の乳癌は完全切除できても転移が発生する可能性が高く、術後半年と1ヶ月くらいは抗がん剤治療をした方が良いとのこと。放射線治療(高価で局所的)抗がん剤を静脈点滴する治療(時間かかるしじっとしてもらうために麻酔が必要)や抗がん剤を皮下注射する治療や錠剤もあるそうです。
家猫の場合は、がんが軽度だったことと今日の血液検査の結果を見ても元気だったため、皮下注射することになりました。隔週打ってもらって、2〜3ヶ月間隔で血液検査とエコーやレントゲンで健康状態をチェックしてもらい半年と1ヶ月後に何もなければ、いわゆる「寛解」となって治療終了となります。
抗がん剤は動物用というものは無くて人間のと同じ。それなのに副作用は軽度だとか。この日さっそく打ってもらいましたが家猫は元気でご飯食べてました。動物つよい。
そして拘束具……ではなくエリザベスウエアを脱ぐ日がきました!家猫は解放された!この頃からご飯の量はいつもの量に戻りました。
脂肪肝(肝リピドーシス)発覚
さて、隔週の抗がん剤治療を始めて3か月後の定期健診。血液検査とエコーとレントゲン。何も出ないだろうとタカをくくっていたら、血液検査で引っかかりました……ALTが156H。肝細胞の異常を示してます。先生曰く「恐らく脂肪肝でしょう」と。
乳腺腫瘍から転移があった場合ほとんど肺に転移することが多いそうです。しかしレントゲンを確認しても肺にその兆候が見られないし、異常値が出ている肝臓も特に問題なし。先生は転移よりも術後「肥満」状態で「小食」状態で急に体重が減ったこと、が気になると。この状態になると肝臓に脂肪が溜まって「脂肪肝(肝リピドーシス)」になるそうです。太った猫が急に食欲不になった時は特に注意が必要なんだとか。盲点でした。ただし数値が異常値なだけで肝機能に問題はなく、肝リピドーシス特有の症状は何も無く、家猫は元気そのもの……どういうこと?
とりえず様子をみることになり、お薬をもらいました。
費用
さてここまで読んでくだった方々は猫飼いか医療関係者だと思ってますたぶん。「どれくらいお金がかかったのか?」気になりますか?私もどれくらいお金がかかるのか……発覚した時はとってもとっても心配でした。ちなみにペット保険未加入です。
家猫の検査費+手術費にかかった費用は、約16万でした。人間が、手術が必要なほど大きな"良性"の乳腺腫瘍を取り除いた場合、局所麻酔で自費15万、全身麻酔だと自費20万だそうです。その費用と同じくらいになりました。
術後の費用は約18万円でした。トータル約34万円ですね。
小さな動物病院ということもあって、このお値段はとても安いと思います。
動物病院お値段ランキング(下に行くほどお安くなります):
- 大学獣医科医療センター(紹介状が必要)
- ブルジョワ地域の動物病院(銀座とか東京港区)
- 法人経営の動物病院 (獣医師・愛玩動物看護師が多めの動物病院)
- 個人経営の動物病院 (獣医師・愛玩動物看護師が少なめの動物病院)
以下、大まかな費用明細をまとめてみました。
検査費、手術費
検査費+手術代=約16万円
術後の費用(6カ月)
隔週の抗がん剤注射費(+脂肪肝の投薬費)+2~3ヶ月検診費=約12万+約6万=約18万円
以上、大手術まとめ終わり。