ワシの名はゴロー。今はそう呼ばれておる。最近のマイブームとやらは椅子の上で前脚の間に頭をうずめて眠ることじゃ。
ことの起こりはそうそうワシが道の真ん中で寝そべってのんきに月見をしておった14日の夜のことじゃった。人間の男と女がワシを見るなり「こんなとこで倒れてるなんて相当弱ってるんじゃない?」と思い込んだらしく自分たちの家まで連れて帰りおった。まー確かにこんなにも歳をとると体のどこかにガタがくるもんじゃで歯はほとんど無くなってしもうたしかろうじて残った歯は痛む。後でわかったことじゃが腎臓がかなり弱っておるらしい(腎臓が弱るのは猫として生を受けた宿命じゃ)。今もそうじゃがワシはけっこう痩せておる。外の世界は老猫にとって簡単にメシが食える環境ではないからの。確かにワシは見た目には「弱ってる」部類じゃったのだろう。見知らぬ家に入ったワシは少々警戒したがそれなりにうまいメシは食えるし清潔なトイレもいつのまにかできあがっておったので「このままこの家に居座れば老後の暮らしは安泰じゃわい!ニャニャニャ!」こうして新しい生活が始まったのじゃ。
人間の男と女は朝から夕方までどこかに出かけておっての一日の大半はワシ一匹でのんびり寝生活を堪能しておる。男のヒザはそれなりに寝心地がよくワシの機嫌がよい時に乗っかってやっておる。最近は男が携帯電話というものを取り出して「猫さーん目線こっちー」とワシを呼ぶんじゃ。その様子を見て女の方が「君のよく行くAV嬢の撮影会とは違って猫はきまぐれやよー」と言うのじゃがワシには意味がよくわからん。男より女の方がワシのごはんの用意やトイレの始末をしてくれるのでどちらかというとワシは女の方が好きじゃな。ちなみに「ゴロー」という名は女がつけてくれおった。「おじいちゃんっぽくてええやろ?ゴロゴロしてるし」と言うと男は「ご老体って意味かと思った」と言うのでこっぴどく怒られておった!ニャニャニャ!ちなみにワシは以前にも人間といっしょに暮らした経験があるのじゃが歳のせいかよく憶えとらん。まあ昔の事なんぞどうでもよいニャ。
つらい野良猫生活を終えて再び豊かな家猫生活を迎えたワシじゃがたったひとつだけ辛いことがある。それは病院へ行くことじゃ・・・!病院の中や先生は怖くはないのじゃがこの家を出るということとそしてなんと言ってもペット用のキャリーケースとかなんとかいうとてつもなく狭い空間に押し込まれるのがこれはもうしんぼうたまらんほどに恐ろしい!ていうかぶっちゃけ無理ニャ!さすがに今日は老体にムチ打って暴れまわったおかげでなんとかあの中に入れられず女にしがみついて病院に行くことになったんじゃ!本当によかったニャ!もう行きたくないニャ!
まあなんやかんやあるが外で暮らしてた頃に比べるとうまいメシは食えるしノミに悩まされることも縄張り争いも無くなった今の生活がワシは好きじゃ!
人間の女曰く「道路に横たわってたのが危なかったので家に連れて帰り、痩せた身体に良くないと食べ物と水を与えていたら、我が物顔で居座るようになりました。これが「にゃんにゃん詐欺」というものでしょうか?」